2024年4月からは相続した土地の名義変更が義務化される
2024年4月1日から、相続登記が法律で義務化されます。
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなったことを申請し、新たな所有者に名義変更する手続きのことです。
遺言などの相続において不動産を取得する場合、相続人は不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
遺産分割で土地の取得が決まった際には、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければならないと決められています。
なお、法律が施行される2024年4月1日以前に相続を開始した場合でも、名義変更の義務化の対象になります。猶予期間は3年なので、早めに名義変更の手続きを開始しましょう。
もしも正当な理由なく相続登記をしなかったときには、ペナルティとして10万円以下の過料が課せられるおそれがあります。
法務省が公開している正当な理由の一例は以下のとおりです。
- 相続人の数が極めて多く、書類の収集や把握に多大な時間がかかる
- 遺産の範囲や遺言の有効性などが親族間で争われており、誰が土地を相続するのか明確でない
- 相続登記の申請義務を負う方が重病である
- 相続登記の申請義務を負う方が配偶者からの暴力によって生命・心身に危害がおよぶ可能性がある状況になっており、避難を余儀なくされている
- 相続登記の申請義務を負う方が経済力に乏しく、相続登記の費用を用意できない
その他にも、相続登記の期限が伸びても仕方ない理由であれば認められる可能性があるため、法務局で相談してみてください。
特に相続登記の期限を延長せざるを得ない理由がなければ、土地を取得した日から3年以内に必ず延長の申請をしましょう。
相続した土地を名義変更する流れ・方法
相続した土地を名義変更する際の流れは、大きく分けて以下のとおりです。
- 1. 相続する土地の登記事項証明書を取得する
- 2. 相続する土地の固定資産税評価額を確認しておく
- 3. 遺言書の有無を確認する
- 4. 遺言書がない場合は遺産分割方法を話し合う
- 5. 相続した土地の名義変更に必要な書類を準備する
- 6. 登記申請書の作成を行う
- 7. 法務局に申請書や必要書類を提出する
次の項目から、それぞれの流れについて詳しく見ていきましょう。
1. 相続する土地の登記事項証明書を取得する
まずは相続する土地の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。登記事項証明書とは、土地や建物の所有者情報を記した書面です。
登記事項証明書は法務局に請求するのですが、相続する土地が明確な場合と曖昧な場合とで取得する手順が異なります。
それぞれの取得方法について解説します。
相続する土地が明確な場合
相続する土地が明確になっており、土地の地番もわかっている場合は、法務局に請求するだけで簡単に登記事項証明書を発行できます。
地番は土地ごとに振り分けられている区分番号のことであり、住所の番地とは異なるケースがあります。
そのため、土地の登記済権利証や固定資産税納税通知書、または法務局で検索して事前に地番を確認しておきましょう。
法務局に登記事項証明書を請求する方法と手数料は以下のとおりです。
請求方法 |
期間 |
費用 |
窓口 |
法務局の窓口で申請してその場で登記事項証明書を受け取る |
600円 |
郵送 |
申請書を郵送して1週間以内に登記事項証明書が送られてくる |
600円 |
オンライン |
インターネットで申請して1週間以内に登記事項証明書を郵送か窓口で受け取る |
郵送:500円
窓口:480円 |
とくに急ぎでなければ、手数料が安く申請が簡単なオンラインがおすすめです。
法務局の公式サイトで申請者情報を登録のうえ、手続きを進めてみてください。
相続する土地が曖昧な場合
被相続人が所有していた不動産を把握できておらず、相続する土地が曖昧な場合、役所で名寄帳を請求しましょう。
名寄帳とは、課税対象となる土地や建物などの固定資産を所有者別にまとめた台帳です。
名寄帳を取り寄せれば、被相続人が所有している土地を一覧で確認できます。
名寄帳を請求する際に必要な書類は以下のとおりです。
- 相続人の本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・健康保険証など)
- 相続人の戸籍謄本
- 被相続人の除籍謄本
必要書類を役所の窓口に持参すれば、名寄帳を取得できます。
内容を確認して相続対象となる土地がわかったら、法務局に登記事項証明書を請求しましょう。
2. 相続する土地の固定資産税評価額を確認しておく
次に、相続する土地の固定資産税評価額を確認します。固定資産税評価額は、各自治体が取り決めている土地や建物の評価額です。
土地の名義変更をするためには登録免許税を計算する必要があり、計算式に固定資産税評価額を用います。登録免許税の計算方法は以下のとおりです。
登録免許税=相続した土地の固定資産税評価額×0.4%
登録免許税は登記手続きの際に国に納める税金であり、固定資産税評価額に税率をかけて計算します。
名義変更の税率は0.4%なので、たとえば2,000万円の土地を相続した場合、登録免許税は「2,000万円×0.4%=8万円」になります。
固定資産税評価額は、毎年4月〜5月ごろに役所から送られてくる固定資産税納税通知書で確認するのが最も簡単な方法です。
もしも固定資産税納税通知書が見つからない場合、役所の窓口で取得して確認しましょう。
3. 遺言書の有無を確認する
遺言書がある場合は、家庭裁判所に提出して検認をしてもらいましょう。
検認とは、相続人が立会いのもとで遺言書の内容を確認し、後日の偽造や改ざんなどを防止するための手続きです。
兼任は、遺言書が有効かどうかを判断するための手続きではないので、注意しておきましょう。
家庭裁判所での検認が完了した後は、検認調書または検認済証明書を発行してもらいます。
なお、公正役場で作成された公正証書遺言はすでに検認されたものと同様の扱いとなりますので、検認の手続きは不要です。同様の理由から、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言書も検認は必要ありません。
原則として、遺言書があればその内容に従って遺産分割を行います。そのため、遺産分割の際には必ず遺言書の有無を最初に確認しましょう。
4. 遺言書がない場合は遺産分割方法を話し合う
遺言書が見つからなかった場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分割方法を話し合う必要があります。
遺産分割の方法は大きく分けて以下の3パターンです。
- 法定相続分の割合に基づいて分割する
- 遺産分割協議書を作成する
- 遺産分割協議が難航する場合はいったん法定相続分で分割
それぞれの方法について順番に解説します。
法定相続分の割合に基づいて分割する
法定相続分は、相続人が2人以上いる場合に法律で定められている相続割合のことです。
原則として遺産は配偶者と子供が相続するのですが、子供がいない場合は代わりに父母や兄弟姉妹が相続人となります。
法定相続分の割合は以下のとおりです。
法定相続人 |
法定相続分 |
配偶者のみ |
1 |
配偶者と子供(孫) |
配偶者:1/2
子供:1/2 |
配偶者と父母(祖父母) |
配偶者:2/3
父母:1/3 |
配偶者と兄弟姉妹(甥・姪) |
配偶者:3/4
兄弟姉妹:1/4 |
法定相続人の人数や内訳などにより、相続の割合は変動します。
たとえば配偶者と子供2人が相続人の場合、配偶者が1/2を相続し、残りの1/2は子供2人で半分ずつ分け合う形になります。
なお、配偶者がいなければ、子供・父母・兄弟姉妹の順番で遺産をすべて相続する決まりです。
遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議は、相続人全員で話し合って遺産分割の割合を決める方法です。
法定相続分の割合で相続するのではなく、相続人全員が納得できるような形を取ります。法定相続分とは異なり、遺産分割の割合を自由に決められる点がメリットです。
たとえば「不動産と預貯金の1/3を配偶者が相続、預貯金の2/3を長男が相続」のように、誰がどの遺産をどの程度相続するのかを具体的に決められます。
遺産分割の内容が決定したら、遺産分割協議書を作成のうえ、相続人全員で署名と実印による捺印をしてください。
また、実印であることを証明するために、相続人全員の印鑑登録証明書も添付しましょう。
遺産分割協議が難航する場合はひとまず法定相続分で分割
遺産分割協議を行ったものの、相続登記の期限である3年以内に話し合いがまとまらない場合は、ひとまず法定相続分で遺産を分割しましょう。
3年以内に法定相続分で相続人申告登記の申出をすれば、登記義務を履行したことになるためです。
なお、相続人申告登記の申出後に遺産分割が成立した場合は、成立日から3年以内に相続登記の申請を再度行う必要があります。
遺産分割協議が難航して土地の所有者が決まらないときは、法定相続分での相続人申告登記で対応してみてください。
5. 相続した土地の名義変更に必要な書類を準備する
誰が土地を相続するのかが決定したら、名義変更に必要な書類を準備します。
必要書類は遺言書の有無や遺産の分割方法などによって異なります。主なケースは以下のとおりです。
- 遺言書がある場合
- 法定相続分で分割または相続人が1人の場合
- 遺産分割協議書がある場合
次の項目から、ケース別に必要な書類を紹介します。
遺言書がある場合に必要な書類
遺言書がある場合、土地の名義変更に必要な書類は以下のとおりです。
- 遺言書
- 検認調書もしくは検認済証明書
- 被相続人の戸籍謄本と除籍謄本
- 被相続人の住民票除票もしくは戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 固定資産評価証明書
- 委任状(代理人が申請する場合のみ)
検認調書や検認済証明書は家庭裁判所で取得できます。なお、公正証書遺言や法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言の場合は、検認調書や検認済証明書は必要ありません。
戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書などは役所で取得できるので、まとめて請求すると良いでしょう。
法定相続分で分割または相続人が1人の場合に必要な書類
法定相続分で遺産を分割したときや、相続人が1人であるときに必要な書類は以下のとおりです。
- 被相続人の戸籍謄本と除籍謄本
- 被相続人の住民票除票もしくは戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 固定資産評価証明書
- 委任状(代理人が申請する場合のみ)
法定相続分や相続人1人のときは、特別な書類は必要ありません。戸籍謄本や住民票などの基本的な書類を揃えたうえで、名義変更の手続きを進めましょう。
遺産分割協議書がある場合に必要な書類
遺産分割協議によって土地の取得が決まったときに必要な書類は以下のとおりです。
- 遺産分割協議書
- 被相続人の戸籍謄本と除籍謄本
- 被相続人の住民票除票もしくは戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
- 委任状(代理人が申請する場合のみ)
遺産分割協議の内容を証明するために、署名押印済みの遺産分割協議書を提出する必要があります。また、相続人全員の印鑑証明書も必要なので、事前に集めておきましょう。
6. 登記申請書の作成を行う
土地の名義変更の際には、法務局に提出する登記申請書の作成が必要です。
なお法務局での手続きの際は「登記申請書」ではなく、「所有権移転登記申請書」という名称になっているため、注意しておきましょう。
所有権移転登記申請書は法務局の窓口で受け取れるほか、法務局の公式サイトからダウンロードもできます。
法務局で用意されている相続関連のフォーマットは以下のとおりです。
- 相続・公正証書遺言の所有権移転登記申請書
- 相続・自筆証書遺言の所有権移転登記申請書
- 相続・法定相続の所有権移転登記申請書
- 相続・遺産分割の所有権移転登記申請書
- 数次相続の所有権移転登記申請書
- 相続人に対する遺贈・単独申請の所有権移転登記申請書
該当のフォーマットをダウンロードのうえ、プリントアウトして内容を記入しましょう。
【自分で相続登記する場合】法務局の「登記手続き案内」の予約を行う
自分で土地の名義変更をする場合には、法務局の「登記手続案内」を利用しましょう。
登記手続き案内では、登記申請書の作成に際して必要な情報を教えてもらえます。
記載する内容がわからなかったり、書類に不備がないかチェックしてもらいたいときに便利です。
法務局の登記手続案内は、窓口での対面、電話、Web会議サービスのいずれかから選択できます。
電話や対面での登記手続案内を利用したい方は、最寄りの法務局に問い合わせして予約を取りましょう。Webでの登記手続案内を希望する場合、法務局の公式サイトからオンライン予約が可能です。
7. 法務局に申請書や必要書類を提出する
登記申請書や必要書類の準備が整ったら、管轄の法務局に提出しましょう。提出方法は以下のとおりです。
提出方法 |
概要 |
備考 |
窓口 |
平日8時30分~17時15分の間に書類を法務局の窓口に持参する |
登記申請書に不備があればその場で訂正が可能 |
郵送 |
書類一式、返送用封筒、切手を同封して法務局に郵送する |
書類に不備があった場合は後日再送が必要 |
オンライン |
オンライン申請システムにマイナンバーカードでログインして申請書を送付する |
添付書類は郵送するか窓口に持参する必要がある |
自分で相続登記の手続きをする場合は、法務局の窓口に提出する方法がおすすめです。提出できる時間帯は限られますが、その場で書類を確認してもらえるため、安心できます。
法務局に足を運ぶ時間がないときは、郵送やオンラインを利用してみてください。
土地の名義変更を行わないリスク
相続をした土地の名義変更を長年行わなかった場合、以下のような弊害が発生する可能性があります。
- 相続人が増えて合意の形成が難しくなる
- 合意を得ることに時間がかかり、土地の売却や活用が困難になる
- 戸籍を揃えるのに時間がかかり、手続きが複雑化する
- 土地の名義を勝手に変更される恐れがある
- 役所からの通知を放置すると、差し押さえられる可能性がある
土地の名義変更を長年行わなかったときにどうなるのか、次の項目から詳しく見ていきましょう。
相続人が増えて合意の形成が難しくなる
土地の名義変更をせずに放置していると、相続の権利が子から子へ移り変わっていくため、次第に相続人が増えて関係が複雑化してしまいます。
たとえば被相続人が死亡した時点では、配偶者と子供3人の計4人が相続人だったとします。
土地の名義変更をしないまま数年が経ち、配偶者と子供が全員死亡した場合、相続の権利は孫に移行します。もしも子供が2人ずつ子供をもうけていたら、相続人の数はこの時点で6人です。
さらにそのまま時が経ち、孫も全員死亡すると、ひ孫に権利が移ります。孫が2人ずつ子供をもうけていたら相続人の数は合計12人になるため、世代が移り変わるにつれ、相続人の数が増えていることがわかります。
相続人の人数が増えると遺産分割協議はまとまりにくくなるものなので、合意の形成も難しくなるでしょう。
合意を得ることに時間がかかり、土地の売却や活用が困難になる
土地の名義変更をしなくても、固定資産税は発生し続けます。
しかし、名義人でなければ売却契約や賃貸契約を結べないため、土地を活用することもできず固定資産税の支払いだけが続くという状態に陥りやすいです。
売買契約や賃貸契約を結ぶためには、土地の共有者全員の合意を得る必要があるからです。
名義変更をする前の土地は、相続人全員が共有する「共有持分」の状態となっています。たとえば相続人が4人の場合、1人あたりの共有持分は1/4です。
共有者が死亡した場合、共有持分は相続人に相続されます。もしも土地の名義変更を長年放置していると、共有持分が子から子へ移っていくため、相続人の数が膨大になります。
土地を活用するための合意を得るだけでも相当な時間がかかる点に注意しておきましょう。
戸籍を揃えるのに時間がかかり、手続きが複雑化する
土地の名義変更を長年放置すると、過去にさかのぼって相続人すべての相続登記を行う必要があります。
たとえば土地の名義人が曾祖父で、相続人が祖父、父、自分と移り変わっていた場合、3回分の相続登記が必要です。
曾祖父から自分に1回だけで名義変更をすることはできず、祖父と父の相続登記をしたうえで自分に名義変更をする流れになります。
また、相続登記のたびに相続人全員の合意が必要となるため、遺産分割協議で3回分の合意を得る必要があります。
さらに、相続登記の際には相続人全員の戸籍謄本も必要です。死亡している場合は除籍謄本も取得しなければならないため、書類の数が非常に多くなってしまいます。
このように、土地の名義変更を放置した時間が長くなるほど、相続登記の手続きが複雑化していきます。
土地の名義を勝手に変更される恐れがある
土地を名義変更せずに放置していると、他の相続人の同意なく勝手に名義変更をされる恐れがあります。
合法的に無断で名義変更する方法は以下のとおりです。
遺言書で土地の相続を指定されている人物であれば、他の相続人に確認を取らず勝手に名義変更をしても法的な問題はありません。
しかし、遺言書による相続登記で勝手に名義変更されているケースは珍しいです。
遺言執行者が選任されていれば、相続人全員に遺言の内容を通知する必要があります。誰が土地を相続するのかを相続人全員が知ることになるため、勝手に名義変更をする流れにはなりにくいでしょう。
また法定相続分による相続登記も違反にはなりません。相続人が複数人いる場合、「保存行為」として全員に相続登記をする権利があるためです。
保存行為とは土地や建物の現状維持に必要な行為のことをいいます。保存行為として行う相続登記であれば、他の相続人に無断で名義変更をしても合法であるとみなされます。
法定相続分であれば相続人の知らないところで勝手に名義変更ができますが、他の相続人に大きな損害を与えることはありません。
ただし、遺産分割協議が終わっていない状態で勝手に名義変更をすると、他の相続人と揉めてしまう可能性があります。
勝手に名義変更されないためには、遺言書の確認や遺産分割協議を早めに終わらせ、相続人全員が納得した状態で名義変更の手続きを行いましょう。
なお、遺言書や法定相続分以外で勝手に名義変更はできません。書類を偽造して名義変更をすると、偽造私文書行使罪や有印私文書偽造罪などの罪に問われる可能性があります。
役所からの通知を放置すると、差し押さえられる可能性がある
土地の相続人が決まっておらず名義変更をしていない状態でも、固定資産税は必ず支払わなければなりません。
固定資産税の納税義務は、相続人全員が負うものとされています。もしも役所に固定資産税を支払わず放置していると、役所から督促状が届きます。
督促状も無視した場合、最終的に不動産を差し押さえられてしまうかもしれません。
差し押さえられた不動産は売却ができなくなるため、固定資産税を支払って解消してもらう必要があります。
しかし、土地の名義変更を長年放置していると「誰が固定資産税を支払うべきなのか」という点で揉めるケースが少なくありません。
揉めている間に差し押さえられた不動産が公売で売却される恐れもあるため、注意しておきましょう。
相続した土地の名義変更をする場合の費用や税金
相続した土地の名義変更をする際には、以下のように費用や相続税が発生します。
- 必要な書類の取得にかかる費用は1万円以内
- 登録免許税(印紙代)は評価額の1,000分の4
- 相続税は遺産が3,000万円+(600万円×法定相続人の数)を超えたら発生
- 司法書士に依頼した場合の基本報酬は5~8万円程度
それぞれの費用や税金について詳しく見ていきましょう。
必要な書類の取得にかかる費用は1万円以内
相続登記の際に必要な書類を取得する際には、1通数百円ほどの手数料が発生します。各書類の手数料は以下のとおりです。
書類 |
手数料 |
登記事項証明書 |
1通480円~600円 |
戸籍謄本 |
1通450円 |
除籍謄本 |
1通750円 |
住民票・住民票除票 |
1通300円 |
固定資産評価証明書 |
1通300円 |
印鑑証明書 |
1通300円 |
遺言書の検認調書(検認済証明書) |
1通800円 |
いずれも1,000円以下で取得可能なので、すべての書類を発行しても費用は1万円以内に収まるケースが大半を占めています。
登録免許税(印紙代)は評価額の1,000分の4
登録免許税は、不動産の名義変更をする際に発生する税金です。登録免許税の費用は「相続した土地の固定資産税評価額×0.4%」で計算できます。
一例として固定資産税評価額が3,000万円の場合は「3,000万円×0.4%=12万円」なので、12万円の登録免許税を納める必要があります。
固定資産税評価額は、納税通知書や固定資産税評価証明書で確認が可能です。
なお登録免許税は、収入印紙を登記申請書に貼り付ける形で納付します。郵便局や法務局などで収入印紙を購入し、登記申請書に貼っておきましょう。
相続税は遺産が3,000万円+(600万円×法定相続人の数)を超えたら発生
相続税は、被相続人から財産を受け取った際に発生する税金です。
土地の名義変更をすると相続税が発生すると考えている方も多いのですが、相続税は名義変更をした際にかかるわけではありません。
相続税には基礎控除が設けられており、相続した遺産が基礎控除額を上回ったときに課税される仕組みです。
基礎控除額の計算式は以下のとおりです。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
たとえば法定相続人が2人である場合、「3,000万円+(600万円×2)=4,200万円」なので、基礎控除額は4,200万円となります。
相続した預貯金や土地の評価額をすべて合計し、債務を差し引いた金額が4,200万円以下であれば、相続税は発生しません。
また、配偶者の遺産を相続する場合は配偶者控除を適用できます。相続税の配偶者控除は、遺産総額が1億6,000万円以下であれば相続税が課税されない制度です。
もしも遺産総額が1億6,000万円以上だとしても、法定相続分の範囲内であれば相続税は発生しません。
遺産総額が基礎控除額を超えそうなときは、配偶者控除を適用して節税しましょう。
司法書士に依頼した場合の基本報酬は5~8万円程度
土地の名義変更を司法書士に依頼した際の基本報酬の相場は、5万円〜8万円程度です。
一般的には、基本報酬の中に書類作成費用や戸籍収集費用などがすべて含まれています。
基本報酬のほか、書類の取得手数料や登録免許税などは実費で発生します。これらの費用は、司法書士に依頼せず自分で手続きをした場合にも必要です。
なお司法書士の報酬体系は自由化されているため、司法書士事務所によっては費用が大幅に異なるケースもあります。
司法書士に相談する際は、必ず見積もりをもらうようにしましょう。
土地の名義変更を司法書士に依頼するメリット
相続した土地の名義変更は自分でもできますが、司法書士に依頼すると以下のようなメリットが得られます。
- 手間を省ける
- 手続き完了までの時間を短縮できる
- 登記申請に伴う事柄についても相談できる
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
書類の収集や作成の手間を省ける
司法書士は相続登記に関して専門的な知識を持っているため、一任すれば手続きをスムーズに進められます。
相続登記を自分で行う場合、必要書類の収集から申請書の作成までに大きな時間を要します。
また、役所や法務局の窓口は基本的に平日しか開いていないため、場合によっては仕事を休まなければなりません。
司法書士に相続登記を依頼すれば、書類の収集や作成などの面倒な手続きをすべて任せられます。
相続登記の負担を軽減したい場合は、司法書士への依頼を検討してみましょう。
手続き完了までの時間を短縮できる
自分だけで相続登記の手続きを進めるよりも、司法書士に任せた方が完了までの時間を短縮させられます。
司法書士は土地や建物など、不動産の名義変更手続きに関するプロフェッショナルです。日常的に相続登記の業務をこなしているため、安心して任せられます。
弁護士や行政書士にも相続登記に関する業務は依頼できますが、登記に関する業務を専門としているのは司法書士だけです。
ほかの士業よりも登記業務を得意としているため、手続き完了までスムーズに進めてもらえるでしょう。
早く相続登記を終わらせたい場合は、司法書士に依頼してみてください。
登記申請に伴う事柄についても相談できる
司法書士に依頼すれば相続登記の手続き以外にも、登記申請に伴うさまざまな事柄について相談できます。
たとえば遺産分割協議の当事者に認知症で判断能力がない方がいる場合、「成年後見制度」という意思決定の支援を受けられるサービスへの申立の相談ができます。
親族間でトラブルが起こりそうなときには、あらかじめトラブルの予防策についても助言を受けられるため、安心です。
また相続登記の手続き完了後、法的トラブルに発展しそうになった場合にも、司法書士に相談できます。
司法書士は相続や登記に関する法律に精通しているため、適切なアドバイスを受けられるでしょう。
なお、司法書士は相続に関するアドバイスはできるものの、紛争解決や他の相続人との交渉はできません。法律に関する仲裁や代理は、弁護士資格を持っている者しか行ってはならないと定められているからです。
相続人同士で紛争が発生していたり、遺産分割の交渉を任せたりしたい場合は、弁護士に相談しましょう。
まとめ
土地を相続したときは、相続を知った日から3年以内に名義変更をする必要があります。名義変更をしなかった場合、10万円以下の過料が課せられます。
土地の名義変更をするときは、必要書類をすべて揃えたうえで法務局に申請しましょう。
自分で手続きを進める手間を省きたい場合は、司法書士への依頼がおすすめです。司法書士は登記手続きのプロなので、安心してすべてを任せられます。
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